さっちゃんの記憶は6歳から今に至るまでの約2年間分しかない。

記憶を失う理由は色々とあるだろうけど、さっちゃんの場合は頭部強打と精神的ショックだ。













さっちゃんは2年前、車両事故にあったのだ。


事故原因はさっちゃんの父親の酒気帯び運転によるスピード違反及び信号無視だった。

さっちゃんの母親はさっちゃんを産み落としてそのまま息絶えたらしく、事故当日は父子2人で外食にでも出かけていたらしい。

そして父親は酒を飲み、酔いが覚めないまま運転し、事故を起こした。

父親は頭部強打により即死。さっちゃんは後部座席に座っていて、そのまま前方座席に頭部を打ちつけ一時意識不明となったそうだ。

衝突された相手車両はすぐに119番と110番通報をした。

運悪くさっちゃんが乗っていた車両は酷く大破し、普通にドアから開けてさっちゃんを助けることは出来なかった。

車内に残されたさっちゃんの救助は難航したが、救助中にさっちゃんは意識を取り戻した。

しかし意識を取り戻したさっちゃんはその時すでに記憶に混乱があった。

その状態でさっちゃんが目の当たりにしたのは、血まみれの人間と、暗く狭い部屋、鳴り響く救急車のサイレンや、人々の大声だった。

そしてさっちゃんはまた気を失い、このショックによって全ての記憶が消えてしまった。


ただ一つ、事故直後の惨状だけを残して。







さっちゃんは退院後すぐに児童保護施設へ預けられたそうだ。

どうやらさっちゃんの両親は身内と疎遠だったらしく、さっちゃんの引き取り手がいなかったらしい。














なぜ俺がこの話をここまで詳しく知っているのか。

半分はさっちゃんを施設から引き取る際に説明を聞いたからである。














そしてもう半分は、俺が衝突された相手だったからだ。


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